お月さまほしい

アイドルとわたしについてのあれこれ

波のきらめきと涙のしずくと・・・2016.8.7・・・

着ようと決めていたお気に入りのブラウスを新大阪駅のコインロッカーに預けたキャリーバッグに入れたまま忘れるだなんて、初めての現場に行くには緊張感が無さ過ぎる。

寝る間も惜しんで丁寧にアイロンを掛けたブラウスを尻目に1日中着て汗ばんだTシャツのまま私は難波駅14号出口に降り立った。久しぶりに訪れた道頓堀は混沌としていて、雑多な空気に少し怖じ気付きながら歩く。
目的地はすぐそばで、前もって調べた通りの建物を目にすると一瞬背筋が張った。
開演直前を知らせる係員に促され、流れるように入場する。
カメラバックは手慣れた係員の女性によって番号札とスムーズに交換され、一安心してエスカレーターに乗る。一旦降りてパンフレットを購入し、胸に大切に抱えて客席へと向かう。
 
「ちっちゃいなぁ・・・」
 
なんともこじんまりした空間だった。
私はすぐに座席を探し当て、桟橋席の隅っこに腰を下ろす。
開演前にぼうっと客席を眺めるの好きだ。いわゆるジャニヲタ、と呼ばれる人たちはほんとうに様々な女性がいて、見ていて楽しい。年齢も着飾った服も、メイクも、髪型も、世の中にいる全ての女の子をぎゅっと集めたように違うのに、一つのステージを見つめる為に集まってくるという不思議さがたまらなく愛おしい。
 
赤い提灯の光に照らされると日常から遠く離れたのだと実感する。
波のさざめきと人々のざわめきに耳を傾けながら、この小さな小さな箱を守り続けた人たちとその仲間たちを想った。
 
 
 
汽笛が鳴る。ゆっくり劇場が明かりを落とす。
気づいたら涙がこぼれていた。最近どうしてこんなに涙もろいのだろうか。
幕が上がる。西畑くんが立っている。一人でしゃんと立っている。
ちゃんとこの目で初めての「ANOTHER」を少しも残らず焼き付けたいのに涙が溢れて止まらなくなる。足元のリュックから何とか静かにハンカチを取り出す。
「Another Tommorow」が流れ出す。冒険が始まる。
 
 
あまりオープニングのことを覚えていない。
ただただハンカチで顔を隠しながら声を出さないようにしずしずと泣きながら光るステージを見つめていたことと、こんなにぐしゃぐしゃに泣いていた人は珍しかったのだろうか、花道を駆けてきた大西さんに一瞬だけじっと見られたような気がしたことだけ覚えている。
 
 
涙の訳を思い起こすと、この夏の身体と心すべてを燃やす少年たちのまぶしさと尊さに圧倒されたのが1つ。そしてなにより、大切で大好きな人たちが守る宝物にそっと触れて私の心のどこかをゆする何かが起きたから、なのだろう。
今でもこの感情をどう言葉に表せばぴったり当てはまるのかまるで分らない。
もしかしたら同じ経験を何度も何度も繰り返せば分かるのだろうか。もうこんな経験すらしないのだろうか、それも分からない。
 
 
 
 
頬を濡らしたのは出航の波しぶきか涙のしずくか。
初めての松竹座。この夏の思い出。